第2章

浮上していく。それが最初に気づいたことだった――見えない糸に引っぱられるような、奇妙な浮遊感。やがて動きが止まり、宙吊りの状態で、私は下を見下ろした。

『なんてこと……』

私の体。私の、本当の体が、ボクシングマットの上にねじ曲がって横たわっている。流れ出た血だまりは、縁からすでに黒ずみ始めていた。首に残るロープの痕は真っ赤なみみず腫れになり、手首には……手錠でつけられた切り傷から、まだ血が滲んでいる。龍也のブーツが私の肋骨を蹴りつけた箇所も、はっきりと見えた。

『これが現実のはずがない。私、本当に死んだの? でも、まだ考えられるし、見ることもできる……』

ジムの天窓から朝日が差し込む。かつては肌にあんなに暖かく感じた、あの桜島の光だ。家は静まり返っている――龍也が「プライバシーのため」と称して、数ヶ月前に使用人を全員解雇したからだ。本当は、彼が私にする仕打ちを目撃できる者を、一人も残したくなかっただけ。

『せめて……せめて小百合のことはまだ見ていられる。それだけでも、まだ……』

リビングから龍也の身じろぎする音が聞こえ、彼のいびきが唐突に止まった。死んでさえ、彼が目覚める音に私の魂は本能的な恐怖でたじろぐ。体よりも、染みついた習慣の方がしぶといらしい。

目覚めた龍也が最初にしたのは携帯の確認だった――エージェントから23件の不在着信。B級映画のキャスティングディレクターが、「DV癖のある元夫その3」役のオーディションに来てほしいそうだ。あまりに悪趣味でなければ、皮肉な話だと笑えただろう。

彼は伸びをしてあくびをすると、まるで朝のコーヒーでも淹れに行くかのようにジムへ入ってきた。私の死体を見ても、驚きも、恐怖も、人間的な感情の欠片も見られない。携帯を取り出し、数枚写真を撮ると、すぐに削除した。

「ちっ。昨夜はやりすぎたか」彼の声は気だるげで、退屈しているとさえ言えた。「まあいい。これでまたプロデューサーに電話しろって泣き言を聞かずに済む」

彼は隅に吊るされた重いサンドバッグに目をやり、その瞳が純粋な興奮で輝くのを、私は見ていた。

「68キロか……星映の最新トレーニング器具だ」傷だらけの顔に笑みが広がる。「ちょうどいい口実になる」

龍也は収納棚から新しいウェイト付きのサンドバッグをつかむと、私の体をその中に詰め込むという、おぞましい作業を始めた。その動きは手際よく、手慣れている。まるで以前にもやったことがあるかのように。あるいは、少なくとも計画を立てられるほどには、考え抜いていたのだろう。

「この汚らわしい女が」作業をしながら、彼は吐き捨てる。「黒石家に戻れるとでも思ったか? 寝言は寝て言え。ようやくお前も役に立ったな――俺の体型維持を手伝うってわけだ」

彼は血痕を漂白剤で消し、ジムの器具を元通りに配置し直し、そして古いサンドバッグが吊るされていた場所に「新しいサンドバッグ」を吊り上げた。仕上げに、彼はSNSに投稿した。「新しいギアが届いた! 68キロのヘビーバッグで、アクションスターの腕を磨き続けるぜ」

『本当に……本当に私をトレーニング器具にしたんだ。死んでまで、安らかに眠らせてくれないなんて』

龍也の満足げな表情を見ていると、四年前のあの日の記憶が洪水のように蘇る。本来なら美咲のものになるはずだった、あの婚約パーティーだ。

『芸能メディアはこぞって「星映の大物プロデューサー令嬢、アクションスターと婚約」と報じていた。高級ブランドのウェディングドレスに身を包んだ美咲は、取り巻きに囲まれてお姫様のように輝いていた。あの頃の龍也はまだ名声の絶頂にいて――ハンサムで、成功していて、誰も止められなかった』

美咲が彼をどんなに崇拝していたか、今でも覚えている。

「龍也さん、すごい! あのビルから飛び降りるシーン、最高だった! 私、部屋中にあなたのポスターを貼るわ!」

だが、龍也が撮影現場で起こした事件の後、すべてが変わった。彼からの「演技指導」中に、ある女優が重傷を負い、顔をめちゃくちゃにされかけたのだ。広報チームが話を揉み消したが、黒石家は懸念を抱き始めた。

家族会議での文人さんの言葉が今も耳に残っている。「美咲にそんなリスクを負わせるわけにはいかない。龍也には暴力的な傾向があるのかもしれないが、桜井家を敵に回すわけにも……」

恵理奈さんがそれに続いた。「瑠美の方が適任よ。あの子は路地裏で生きてきたんだから――扱いにくい男にも対処できるでしょう」

彼らの公式声明は、情報操作の傑作だった。「慎重に検討した結果、瑠美と龍也の方がよりお似合いだと判断いたしました。美咲はまだ若く、自身のキャリア形成に集中すべきです」

美咲は偽りの涙まで流し、完璧にその役を演じきった。「家族の決定を尊重します……瑠美姉様の方が大人ですし、きっと良い奥様になるでしょう……」

けれど私は、彼女の瞳に安堵と勝利の色が閃くのを見逃さなかった。

『ようやく私の価値を認めてくれたんだと思った。私にはもっと良い人がふさわしいと、そう信じてくれたんだと。なんて甘かったんだろう』

結婚して最初の数ヶ月は、ほとんど普通だった。龍也と私は時々会話さえした――彼が演技のテクニックを語り、私が星映の偽善に対する彼の愚痴を聞く。もしかしたら、ほんの少しだけ、本物を見つけられたのかもしれないとさえ思った。

美咲があの電話をかけてくるまでは。私がキッチンで夕食を作っていると、リビングから龍也の怒声が聞こえてきた。

「なんだと? あいつが路上でそんなことを? もっと早く言うべきだっただろ!」

電話の向こうから、美咲の吐き気がするほど甘い声が聞こえてくる。「龍也さん、言いたくはなかったんだけど、あなたは真実を知るべきだと思うの。瑠美が路上で暮らしていた頃……生きるために色々なことをしたって。バーのホステスとか、もっとひどいことも……家族も、あの子が病気を持っていないか心配していて……」

その夜、龍也は初めて私を殴った。一撃ごとに、非難の言葉が浴びせられた。「汚らわしい女め、清純ぶってやがったな? 俺様の家でお姫様ごっこか?」

それからというもの、美咲からのメッセージは定期的に送りつけられる毒の一滴となった。

『瑠美の調子はどう? 昔の癖は治ったかしら?』

『また離婚したいって言ってるって聞いたわ。やっぱり昔の癖は治らないのかしら……』

どのメッセージも、龍也の怒りの火に油を注いだ。

『私の魂は怒りで震える。すべて美咲の策略だったんだ。私が両親の愛を奪い合うのをやめても、彼女は私に安らぎを与えてはくれなかった』

龍也がその残忍な作業に没頭している間、小道具の箱の中では、小さな影がうずくまっていた。両手で目を覆い、物音がするたびに震えている。小百合はボクシングの音が聞こえるたびに制御不能に震え、泣き声を出さないように自分の小さな手を噛むことを覚えていた。

突然、龍也はかすかな物音に気づき、さっと振り返った。小道具箱がわずかに揺れている。彼は大股で近づくと、蓋を乱暴に開け放った。

小百合は隅で丸くなり、その小さな体は恐怖で痙攣していた。龍也は冷たく死んだような目で彼女を見下ろした。

「小百合。何を見た?」

少女は声も出せず、涙が静かに頬を伝うだけだった。龍也の声は凍てつくような囁きに変わった。

「何を見たのかと聞いているんだ」

父親の悪魔のような視線に、小百合は必死に首を横に振り、かろうじて聞き取れるほどの声で囁いた。

「見て……見てない……何も……」

頭上で漂いながら、私は安堵の波が魂を洗い流すのを感じた。『よかった。小百合は何も見ていない。少なくとも、この恐怖を背負わずに済む』

龍也は満足げに鼻を鳴らすと、菓子棚からパンをいくつか掴み、箱の中に放り込んだ。

「そこにいろ。出てきたらお前もサンドバッグに詰めてやる。わかったな?」

小百合は必死に頷き、隅の方へさらに身を縮こませた。龍也は蓋をバタンと閉めると、作業に戻り、サンドバッグを元の位置に吊るしてから、例の「新しい器具」についてのSNS投稿をした。

隠蔽工作を終えると、龍也は着替えて祝杯をあげに外へ向かった。去り際に、彼は吊るされたサンドバッグを満足げに一瞥した。

彼の車が走り去ると、翠ヶ丘の屋敷は再び死のような静寂に包まれた。ただ桜島の海風が窓を揺らし、かすかな囁きのような音を立てるだけだ。

ゆっくりと、慎重に、小百合は小道具箱から這い出した。小さな足は長いこと窮屈な姿勢でいたせいで痺れていたが、そんな不快感は気にも留めていなかった。

彼女はおぼつかない足取りでサンドバッグに歩み寄り、顔を上げてそれを見上げた。彼女には高すぎて届かない。だが、どういうわけか、彼女はわかっていた。

小百合はもう一度あたりを見回し、パパが本当にいなくなったことを確かめた。そして、想像しうる限り最も小さく、悲痛な声で、彼女は呼びかけた。

「ママ……」

『ああ、嫌だ。あの子は、全部見ていたんだ』

前のチャプター
次のチャプター